まずは理解しておきたい「新NISA(つみたて投資枠)」の概要
新NISA(つみたて投資枠)は、長期にわたる資産形成を目的とする投資枠のことです。2024年1月から、これまでのNISA制度「つみたてNISA」の役割を引き継ぐ投資として「つみたて投資枠」がスタートしました。
そもそもNISAとは、投資をして得た利益が非課税になる制度のことです。通常は投資で利益を得た場合、利益の約20%が課税されますが、NISA枠の範囲内の投資により得た利益は非課税になります。
2024年からつみたて投資枠が導入されて年間投資枠が40万円から120万円に拡大し、非課税保有期間が無制限になりました。そのため、投資初心者の方もNISAを始めようとする動きが出ています。
新NISA(つみたて投資枠)の始め方5ステップ

新NISA(つみたて投資枠)は、5ステップで始められます。ここでは、新NISA(つみたて投資枠)の始め方を説明します。
1. 専用口座を開設する金融機関を決める
新NISA(つみたて投資枠)を始めるには、証券会社や銀行などで専用口座を開設する必要があります。証券会社の場合は「証券総合口座」、銀行の場合は「投資信託口座」を開設し、「証券総合口座」「投資信託口座」のなかにNISA専用の口座を別枠で作成します。
NISA口座は1人1口座しか作成することができません。今利用している複数の銀行で、それぞれNISAの口座を持つといったことはできないため注意しましょう。
詳細は、「新NISA(つみたて投資枠)の金融機関の選び方」を参考にしてください。
2. 口座開設を申し込み、本人確認書類やマイナンバー確認書類を提出する
金融機関が決まったら、口座を開設する手続きを行います。口座開設に必要な書類の例は、以下のとおりです。
口座開設に必要な書類
- 非課税適用確認申請書 兼 非課税口座開設届出書
- マイナンバー確認書類
- 本人確認書類
インターネットで申し込む場合は、必要情報を入力して必要書類をアップロードします。金融機関の確認が完了したら口座が仮開設され、取引ができるようになります。
面談や店頭で申し込む場合は、必要書類を持参して手続きを行ってください。本人確認書類に記載された住所や氏名は、金融機関に登録した情報と一致している必要があります。
3.審査を受ける
口座開設の申込後、税務署の審査が行われます。審査では、本人確認書類と申込者が一致しているか、二重開設になっていないかなどをチェックされます。審査が完了したら口座開設通知を受け取り、口座を本開設できます。
詳細は、「口座開設の流れ」を参考にしてください。
4. 投資する銘柄を選ぶ
まずは積立投資をする商品(銘柄)を選びましょう。商品は、金融庁が定めた一定の基準を満たす「投資信託」と「ETF(上場投資信託)」のみです。金融機関によって取り扱っている商品が異なります。
詳細は、「新NISA(つみたて投資枠)の銘柄の選び方」を参考にしてください。
5. 購入する積立設定をする
投資する商品が決まったら、積立設定を行います。新NISA(つみたて投資枠)は一度設定すると、あとは定期的に自動買付をしてくれます。金融機関によっては100円や1,000円から設定できるため、投資初心者の方は少額から始めるとよいでしょう。
一度設定したら、自動で買い付けされるため、引落口座の残高不足に注意してください。
新NISA(つみたて投資枠)の金融機関の選び方
新NISA(つみたて投資枠)の口座は、実店舗の銀行や証券会社の店頭、ネット銀行やネット証券などで開設できます。ここでは、「どこで開設すべきか」と迷う方のためにポイントを説明します。

対象商品の豊富さ
新NISA(つみたて投資枠)の金融機関を選ぶ際は、商品の豊富さをひとつの基準にするとよいでしょう。一般的に、ネット証券は取り扱い商品が多いといわれています。
商品選びにこだわりがある場合は、できるだけ多くの商品を扱っている金融機関を選ぶのがおすすめです。
引き落とし方法
積み立てるお金の引き落とし方法は、以下の3つの方法が考えられます。
- 証券総合口座
- 銀行口座
- クレジットカード引き落とし
指定の銀行口座から毎月自動的に引き落とす金融機関もあれば、特定のクレジットカード決済で投信積立を行うことでポイントが貯まる金融機関もあります。
どの引き落とし方法に対応しているかは金融機関によって異なるため、事前に確認してみてください。普段よく利用している引き落とし方法を選ぶと使いやすいでしょう。
アプリやサービスの使いやすさ
インターネットバンキングやモバイルアプリ、ATMの利用など、金融機関が提供するサービスの利便性で選ぶのもひとつの方法です。
ネット証券の場合は、アプリやスマホのWEBサイトで買い付けから設定の変更が簡単にできて便利です。銀行の場合は、近くに窓口があって気軽に相談・問い合わせができるというメリットがあります。重視したい利便性にあわせて金融機関を選ぶとよいでしょう。
最低の積立金額
投資できる最低の積立金額は、金融機関によって異なります。毎月100円から可能なところもあれば、毎月1万円からのところもあります。
「まずは少額から始めたい」という場合は、最低積立金額の低さを確認するとよいでしょう。長く投資を続けやすい積立金額を設定できることを確認してください。
新NISA(つみたて投資枠)の口座開設の流れ

新NISA(つみたて投資枠)の口座開設の申し込みは、金融機関の「NISA口座開設の申し込み」といったページから行います。口座申し込みフォームに必要事項を入力して送信します。
ネット証券では、本人確認の書類提出などもスマホやパソコンから申し込み可能です。郵送による申し込みに対応しているところもあります。店頭で口座開設する場合は、本人確認書類を持参しましょう。
申込後は、提出された書類をもとに金融機関が税務署へ口座の重複確認を行う審査があります。審査には1〜2週間ほどかかるのが一般的です。そのため口座の本開設には2週間〜1カ月ほどかかることがあります。
新NISA(つみたて投資枠)の銘柄はどう選ぶ?
つみたて投資枠で銘柄を選ぶ際、「何を基準に選ぶべきか難しい」と感じる方がいるかもしれません。銘柄を選ぶ際は、各金融機関の銘柄検索機能を活用するのがおすすめです。投資対象や運用方法などで絞り込みをかけたあと、信託報酬の低い順に並び替えると比較しやすくなります。
銘柄は、大きく「株式100%型」「複合資産型」の2種類に分けられます。
【株式100%型】
投資されたお金をすべて株式に投資して利益を得る投資信託のこと
【複合資産型】
株式に債券やリート(不動産)などを組み合わせて利益を得る投資信託のこと
債券は株式よりリスクとリターンが低く、株式とは逆の値動きをすることが多いため、リスクを抑えたい方は「複合資産型」がおすすめです。リスクが高くてもハイリターンを狙う場合は「株式100%型」を選ぶとよいでしょう。
新NISA(つみたて投資枠)はいつから始めるべき?
新NISA(つみたて投資枠)を始めたいと思うものの、「投資を始める勇気がない」という方もいるかもしれません。ここでは、新NISA(つみたて投資枠)を始めるタイミングについて説明します。
できるだけ早い段階で少額から始めるのがおすすめ
新NISA(つみたて投資枠)は、運用期間が長いほど複利効果が高くなるため、思い立ったらすぐに始めるのがおすすめです。
複利とは運用益で得た収益を元本に加えて再投資することです。元本に加えて収益にも利息が付くため、運用年数が長くなるほど資産はふえやすくなります。「投資が不安」という方は、まずは1,000円、1万円などの少額から始めるとよいでしょう。
投資枠を毎月定額で使い切るなら1月から始めるとよい
投資枠を毎月定額で非課税枠を使い切りたい場合は、1月から始めるのがおすすめです。
新NISA(つみたて投資枠)は毎年120万円が非課税になります。12カ月で計算すると毎月10万円まで投資できます。投資を1月から始めれば、毎月10万円ずつの積立でその年の非課税枠120万円すべてを使い切れるという計算です。
新NISA(つみたて投資枠)のメリット
新NISA(つみたて投資枠)は、積立投資をした投資信託を長期間非課税で保有できる点が大きなメリットです。投資している間は税金がかからないため、資産が膨らんでも税金を気にしなくてよいという特徴があります。
一般的な投資では、安いときに買って高いときに売却すると利益になりますが、初心者の方にとっては売り時や買い時の判断が難しいこともあるでしょう。新NISA(つみたて投資枠)は、毎月決まったタイミングで設定した金額を投資し、長期運用で利益を出すことを目的としているため、売り時・買い時に迷う必要がありません。
また、新NISA(つみたて投資枠)の投資信託は信託報酬が低く、販売手数料も0円であるためコストがかからない点もメリットのひとつでしょう。
長期投資目的ではあるものの、現金が必要になった際にはいつでも売却して使えます。
新NISA(つみたて投資枠)のデメリット
新NISA(つみたて投資枠)を始める前に、デメリットも理解しておきましょう。
新NISA(つみたて投資枠)は長期投資目的であるため、すぐに利益が出ないという特徴があります。すぐに利益にならないのはデメリットとも捉えられますが、初心者にとってはファーストステップとして始めやすいともいえるでしょう。
また、投資にはリスクもつきもので、元本割れの可能性もゼロではありません。元本割れとは、投資のために購入した金融商品の価格が購入代金を下回ることです。投資には元本割れのリスクがあることを理解しておく必要があります。
新NISA(つみたて投資枠)は非課税期間が無期限です。そのため、「いつからいつまで投資して、いつ売却すればいいか」という判断に悩むかもしれません。
新NISA(つみたて投資枠)を利用するうえでの注意点
新NISA(つみたて投資枠)を利用する際は、以下の点に注意しましょう。
- 開設できるNISA口座は1人1つのみ
- 少額投資から始める
- 長期で保有する
- 元本割れのリスクがある
開設できるNISA口座は1人1つのみ
NISA口座は1人1口座のみ開設可能です。複数の金融機関に同時に開設することはできません。
複数の口座の開設を申し込んだとしても、税務署で審査が実施されてすでに口座を持っていることが判明します。途中で金融機関を変更することは可能ですが、最初に決めた金融機関で長期運用したほうが手続きの手間が少なく済むでしょう。
少額投資から始める
新NISA(つみたて投資枠)は、毎月少額の投資を継続することで効果を発揮するものです。最低限の金額でも積み立てることで、長期的な資産形成ができます。
投資初心者の方は最初から高額の投資を行うのではなく、無理のない範囲で始めて余裕が出てきたら少しずつ投資金額をふやしていくとよいでしょう。
長期で保有する
新NISA(つみたて投資枠)は長期的な資産形成を目指すものです。
「思ったように資産形成ができないから」といって早期に解約すると、税制上のメリットを享受できなくなる可能性があります。積み立てた資産は、長期間保有することを意識しましょう。
投資は短期間で判断できるものではないため、短期の増減は気にしないようにしましょう。値下がりが理由で銘柄変更するのは避けて、長期的な目線で見るように心がけてください。
元本割れのリスクがある
新NISA(つみたて投資枠)は、ほかの投資と同様に「元本割れ」のリスクがあります。投資を始める前に、どのような投資方法でも元本割れのリスクがあることを理解しておきましょう。
ただ、長期間投資続けることで元本割れする可能性は低くなる傾向があります。投資信託の価格は上下しますが、価格の変動に過度に一喜一憂することなく長期間にわたって続けることが大切です。
よくある質問
新NISA(つみたて投資枠)の始め方を教えてください。
新NISA(つみたて投資枠)は、以下の手順で始められます。
- 専用口座を開設する金融機関を決める
- 口座開設を申し込み、本人確認書類やマイナンバー確認書類を提出する
- 審査を受ける
- 投資する銘柄を選ぶ
- 購入する積立設定をする
新NISA(つみたて投資枠)を始めるタイミングはいつがいいですか?
新NISA(つみたて投資枠)で口座開設後、そのまま放置したらどうなりますか?
新NISA(つみたて投資枠)は銀行でも始められますか?
ネット証券の場合はアプリやスマホのWEBサイトで買い付けから設定変更ができるというメリットがあり、銀行の場合は窓口で気軽に相談・問い合わせができるというメリットがあります。重視したい利便性にあわせて金融機関を選ぶとよいでしょう。
ただし、NISA口座は1人1口座しか開設できない点に注意してください。